環境の「毒」が人間に「がん」を引き起こす。

①あらゆる生命は、常に「環境」にさらされています。自分の周りには、必ず「環境」が存在します。環境が含む様々な成分を「環境因子」と呼びます。そして、あらゆる生命は「環境因子」の影響を受けています。

我々は、「環境」に含まれる様々な「毒」性成分がヒトやその他の生命体にどのような影響を及ぼすのか、それを明らかにしたいと考えています。

生命科学科

紫外線は様々な皮膚疾患を誘発する。

生命科学科

②太陽からの紫外線も環境因子の一つです。体(皮膚)に浴びればシミしわといった美容的な問題だけでなく、角化症や皮膚がんのような生命に関わる病気が発症します。

環境省では紫外線による様々な疾患のリスクや予防方法を重点課題として対策しています。
紫外線を防御する自然のバリアーであるオゾン層が1%減少すると、年間で万単位の皮膚がん患者が増加すると試算されています。

④特にメラノーマは悪性度が高く、ステージ4(IV)の5年相対生存率は11%と低くなっています。

⑤このような凶悪なメラノーマの発症機構を解明することは非常に重要です。
  我々はこれまでの研究でZFP28, c-RET, MOBKL2B, GNG2, ESPIN, PLEXINC1, DTX3L, TFCP2といった、これまで知られたいなかったメラノーマ発症に関わる新たな遺伝子を多数同定し、様々な解析を行いました(各論文はAchievementsを参照)。今後も紫外線発がんや、紫外線による皮膚疾患の研究を進めていきます。

ヒ素汚染は世界規模の環境健康問題である。

飲料水, 飲用水

⑥安全な水の確保は、ヒトが、生命が生きていく上で最も重要な課題の一つです。世界では、安全ではない水を飲用している人々が8億人近く存在し、その上位10国はすべてアジア・アフリカ国家であり、世界全体の6割以上を占めています。人々の体内に入る「水」にも、様々な「環境因子」が含まれ、様々な疾患を引き起こします。

⑦水に含まれる「環境因子」の中でも、飲用井戸水のヒ素汚染は世界レベルでの問題となっています。高濃度のヒ素に汚染された井戸水しか飲む水がないため、飲み続けることで、慢性ヒ素中毒をおこします。その結果、黒皮症、角化症、ボーエン病のような皮膚病、扁平上皮がんなどの皮膚がん、そして糖尿病、神経疾患、内蔵がんなど、様々な重篤な疾患が発症します。
世界では、2億人もの人々が、ヒ素汚染された水を飲料水として利用しています。

⑧我々はバングラデシュなどのヒ素汚染地域に住む人々の健康診断を実施し、実際にヒ素が人々の皮膚の黒さ(メラニン沈着)に影響を与えていることを明らかにしました。更にマウスへのヒ素曝露でも同様の症状が現れること、そしてそれらの症状がエンドセリン1(Endothelin-1, ET-1)と呼ばれる、メラニン色素合成に重要な役割を果たすタンパク質の発現上昇によって引き起こされることを明らかにしました。(Yajima, et al., ArchToxicol. 2017.)

⑨近年では、ヒ素による様々な疾患の発症や重篤度には他の重金属が関与していることが明らかとなってきています。
我々は、ヒ素汚染井戸水には高濃度のバリウムもまた含まれており、バリウムはヒ素による再防止を抑制することで、結果的にヒ素による発癌のリスクを上昇させていることを明らかにしました。(Yajima, et al., ArchToxicol. 2012.)
現在も、ヒ素によって誘発される様々な疾患について、その発症機構の解明や予防法・治療法の開発を行っています。